-仁義なき戦い 広島死闘編-
監督:深作欣二 出演:菅原文太 北大路欣也 千葉真一
文太の最高傑作「仁義なき戦い」シリーズ第二作、この作品は文太を中心にした複雑なヤクザ社会の政治ゲーム的色合いよりむしろ、組織に騙され利用され、挙句の果てには悲惨なラストを迎えるある純情な青年ヤクザ(北大路欣也)の悲しくも切ない青春ドラマである。

劇中には、梶芽衣子とのラブ・ストーリーがあると思えば、狂暴な殺人マシンと化しての敵対組織の幹部を殺しまくる迫力ある鉄砲玉シーンもある。そして、千葉真一の伝説的演技である大友勝利との血みどろの死闘ありの展開で、ほとんど北大路の独壇場でストーリーは展開してゆく。
しかし、最後には狡猾な親分名和宏に利用された末に、拳銃自殺を遂げる。
ここで文太は、この名和の役とは対照的に、この狂暴な純情ヤクザ北大路をなんとか手助けしようとする役柄で登場する。

旋盤工北大路は、ヤクザの賭場で傷害事件を起こし、広島刑務所に収監される。
その刑務所内の検身所で、看守の「もっとケツの穴拡げてみせい!」なる要求を拒否、その場で看守たちと取っ組み合いの喧嘩になる。その騒然とした状況を見守っていた囚人連中の中に、先の土居組組長射殺の件で収監されている広能昌三(文太)の姿もあった。重要な文太とのファースト・コンタクトは「出会いは、ふと、さりげなく」である(はーと)。

収監そうそう大暴れした北大路は、当然革手錠をされ鎮静房へぶちこまれる。そこへ文太が炊事当番で登場! 覗き窓からタクワン付きのメシを差し入れ、
「コゲ飯よそってきちゃったけん、よう噛んで元気つけいや、のう」
と、"侠"のささやかな優しさの左ジャブ! 思わぬ文太兄ィの思いやり爆弾で、鎮静房にいれられ精神状態がさらに不安定であった北大路にとっては地獄に仏、「ありがとうございます」と心から感謝し、犬喰いスタイルでメシをほおばる。

というわけで二年の刑期を終え、シャバにでた北大路は、村岡(名和宏)組の一員となるが、名和の姪である梶芽衣子に手をつけたということで、とりあえず九州に左遷(?)されてしまう。しかし、九州で鉄砲玉としてひと仕事した北大路は、晴れて広島に帰ることとなった。

その頃、広能(文太)は呉にて、小さいながらも一家を構えていた。狭いながらも楽しい一家、今日の夕食は豪勢に焼肉である。うまそうに焼肉をパクつく文太。だが子分たちはお茶漬けを食べている。ここで、こういう光景を目のあたりにして黙っている文太ではない、そう、この作品を見ている文太フリークだれもが思ったはず。そして! 文太ファンなら誰しも期待する言葉が文太の口から発せられた!
「お前等もやれいや」
・・・・・。くぅ〜〜〜! 文太ファンならたまらないお言葉!
こういうのたまりませんぜ! 文太兄ィ! 子分への思いやりも人一倍! ここでも侠気爆発!!
ここで、文太ファンは、子分衆たちが「はい!いただきやす!おやっさん!」とばかりに涙を流しながら焼肉をパクつく。そして、それを満足そうに見守る文太を想像するだろう!!
しかし、子分衆の返答は「いえ、おやっさん用に買うた肉ですけん」とそっけない返事。
ちょっとアテがはずれた文太、そしてちょっと落胆している僕達。気が付けば、外ではのら犬がキャンキャン吠えてうるさい、ここで文太兄ィ「(犬たちが)腹すかしとるんかの・・・」
ええ、文太兄ィはやります。子分衆に肩すかしされた侠気を次は動物に爆発させる腹なのだ!
はっきり言って安っぽい動物愛護映画などメではない、文太の侠気が動物愛護精神に メタモルフォーゼする瞬間、いまここに来たり!! 肉を一切れつまんで窓を開け、、
「(犬たちに)オイ、こっち来い・・・」
クゥ〜たまらん!
たまらんです文太兄ィ! 犬畜生にも侠気の御加護! 犬クンたちにはこの心意気はわからないと思うが、ありがたく食べてくれるだろう!!
しかし、しかしである。肉食獣であるのら犬君たちは、文太が与えた肉を食べようとしない。ここで、文太は何かに気付き、子分衆に「お前等・・・肉屋でなんの肉買うてきたんない!?」と鋭く詰問。すると子分衆は、「すんません・・・・」とションボリ・・・。
そう、これはのら犬君たちの肉なのであった。これでは文太も憮然とするしかないね!
因みに犬を使ったお料理は「不良番長」「極道対まむし」にも登場する、東映の永遠のスタンダードメニューさ。

話を北大路に戻すと、広島に帰ってきた北大路は文太と再会する。しかし、北大路は敵対組織の幹部である時森(遠藤辰雄)の首を狙って眼がギラギラしている時であった。
さらにこの時森は山守組長(いわずと知れた金子信雄)の古い知り合いであり、金に困った文太が仕方なく山守に頼まれ、自分の組にかくまっていたのだった。文太はここで、北大路の手を汚させまいと、自分の手で時森(遠藤辰雄)を始末する。

孤独な青年ヤクザに対する個人的な思いやり、その思いも空しく、北大路は暗い倉庫で自らの命を絶ってしまう。

北大路、子分衆、そしてイヌ・・・この作品でも文太の侠気は大爆発であった。
(すす)
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